【事業再構築補助金】第6回公募の変更点

2022年3月28日から事業再構築補助金第6回公募が始まりました。第5回までの公募要領から多くの変更点がありましたので、まとめてみました。
申請を考えておられる事業者の皆様は、参考にしてください。
大きな変更点は以下の通りです。

第6回公募の主な変更点
  1. 「通常枠」の補助上限額の引き下げ
  2. 「卒業枠」「グローバルV字回復枠」の廃止と、「グリーン成長枠」の新設
  3. 「緊急事態宣言特別枠」の廃止と、「回復・再生応援枠」の新設
  4. 対象事業者の売上高減少要件の緩和
  5. リース会社との共同申請の追加 (リース会社に対して補助金交付が可能となった)
  6. 経費区分「建物費」に対する追記

    それぞれの変更点の詳細について説明していきます。

    実際の申請にあたっては必ずご自身で最新の公募要領を熟読し、内容を確認してください。(本記事は3月30日時点の情報に基づき記載しています。)

    「通常枠」の補助上限額の引き下げ

    通常枠は「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援」するという事業再構築補助金では最もスタンダードな申請枠で、申請数も他の枠と比べて圧倒的に多いです

    申請条件や対象となる事業内容は、これまでとほぼ同じですが、補助金の上限額が変更となりました。補助上限額は従業員数によって異なりますが、従業員数100人以下の事業者にとっては補助金の最大額支給額が引き下げとなっています。

    補助金額の上限

    従業員数 第5回 第6回
    20人以下 4000万円 2000万円
    21~50人 6000万円 4000万円
    51~100人 8000万円 6000万円
    101人以上 8000万円 8000万円

    なお、補助率はこれまでと同じく、中小企業者等 2/3 (6,000 万円超は 1/2)、中堅企業等 1/2 (4,000 万円超は 1/3)となっています。

    「卒業枠」「グローバルV字回復枠」の廃止と、「グリーン成長枠」の新設

    第5回公募にあった「卒業枠」「グローバルV字回復枠」が廃止となりました。ちなみに廃止された枠の概要は以下の通りです。

    従業員数 卒業枠 グローバルV字回復枠
    概要 中小企業から中堅・大企業へ拡大していく 海外展開によりV字回復していく
    対象数 400社限定 100社限定
    補助金額上限 1億円 1億円
    補助率 2/3 1/2

    社数が限定されていますが、中小企業が雇用を増やし大規模化することや、海外進出による競争力の強化といった政策目的が見て取れます。

    第6回公募では、この二つに代わり(とは明言されていませんが、私はそう解釈しています)に、「グリーン成長枠」が新設されました。

    グリーン成長枠とは

    研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援」するという枠です。
    グリーン成長戦略とは、CO2削減や技術革新によって社会のイノベーションを目的とした戦略で重点14分野が指定されています。(詳しくはコチラ)
    これらの重点分野に沿った取組みが対象となる申請枠です。

    詳細は、かなり長くなってしまうので、本記事では省きますが、補助上限額が中小1億円、中堅1.5億円と高く設定され、また申請要件のひとつである売上高減少要件が不要ということで、経済産業省の政策目標としてかなり力をいれた申請枠であることが覗えます。

    申請に際しては、事業計画書の作成だけではなく研究開発・技術開発計画書や人材育成計画書なども必要となり、申請のハードルは高そうです。しかし、代替エネルギー分野や電気自動車分野に対して進出を検討している事業者にとっては非常に魅力的な政策支援と考えられます。

    「緊急事態宣言特別枠」の廃止と、「回復・再生応援枠」の新設

    新型コロナの影響をもっとも深刻に受けた飲食サービス業や宿泊業を対象とした「緊急事態宣言特別枠」が廃止となりました。代わりに(とは書いてありませんが)、第6回公募では「回復・再生応援枠」が新設されました。

    回復・再生応援枠とは

    「新型コロナウイルスの影響を受け、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等の事業再構築を支援」するという枠です。「緊急事態宣言特別枠」にあった「早期に事業再構築が必要な飲食サービス業、宿泊業等を営む中小企業等」という記述がなくなりました。
    業種を問わず業況が苦しい事業者が応募できる枠として生まれ変わりました。(私の解釈です。)

    補助上限額は通常枠に比べ低く設定されていますが、補助率は中小企業3/4、中堅企業2/3と高く設定され優遇されています。例えば、従業員数20人の場合は、投資額1500万円未満であれば、回復・再生応援枠の方が通常枠より多くの補助金が受給可能です。

    回復・再生応援枠の補助上限金額

    従業員数 補助上限額
    5人以下 500万円
    6~20人 1000万円
    21人以上 1500万円

    ただし、通常枠にはない条件として、以下、①または②のどちらかを満たすことが必要となっています。
    ①2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年又は2019年同月比で30%以上減少
    ②中小企業活性化協議会等から支援を受け再生計画等を策定

    回復・再生応援枠は優先的に審査され、不採択となった場合も通常枠で再審査されるため、採択率は高いと予想されます。自社の状況が回復・再生応援枠の対象になるのであれば、通常枠より優先して良いと思います。

    対象事業者の売上高減少要件の緩和

    事業再構築補助金には、コロナ前に比べてコロナ以降の売上(または付加価値額)が減少しているという売上高減少要件というものがあります。
    この売上高減少要件が(ちょっとだけ)緩和されました。

    具体的には、「2020 年 4 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019 年又は 2020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少していること等」となりました。第5回までは、上記に加え2020年10月以降の期間の売上高減少も必要でしたが、その記載がなくなりました。

    これによって、「2020年4月~9月までの売上高減少は激しかったけど、2020年10月以降はなんとか持ち直した事業者」が事業再構築補助金に申請できるようになりました。また、売上高に変えて付加価値額の減少を用いることができる要件も第5回と同様にあり、その期間も2020年10月以降の条件はなくなりました。

    2020年10月以降もコロナ以前に比べて業績が厳しい事業者にとっては、申請要件の緩和は特に関係ありません。

    リース会社との共同申請の追加

    事業再構築補助金は、設備投資に対する補助金ですが、設備の借用(リース)費用も補助対象経費となります。これ自体は第5回までと変わりませんが、第6回公募では「中小企業等がリースを利用して機械装置又はシステムを導入する場合には、中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、中小企業等とリース会社の共同申請を認め、機械装置又はシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することが可能となりました。
    なお、リース会社は中小企業・中堅企業である必要はありません。(大企業もOK)

    「補助金が自社ではなく、リース会社に支払われることで何か良いことがあるのか?」
    という気もしますが、おそらくこれまではリース資産に対して、圧縮記帳が行えず法人税が大きくかかってしまうという問題があったのではないかと思われます。リース会社が補助金を受け取ることで、リース費用を小さくし、補助金受給による法人税増加がなくなるのではないかと思います。(推測です。間違っていたらスミマセン。)

    建物費に対する追記

    補助対象経費そのものに変更はありませんが、公募要領に「念押し」するかのような記載が見られましたので、申請にあたっては十分注意した方が良さそうです。もっとも目につく変更点が建物費の区分の下に「 建物の新築については必要性が認められた場合に限る。」と記載されました。

    注釈にも以下の記載が追記されています。

    追加された注釈

    ※6 建物の新築に要する経費は、補助事業の実施に真に必要不可欠であること及び代替手段が存在しない場合に限り認められます。「新築の必要性に関する説明書」を提出してください。
    ※7 事業計画の内容に基づき採択された場合も、「新築の必要性に関する説明書」の内容に基づき、建物の新築については補助対象経費として認められない場合がありますのでご注意ください。

    これまでの申請の中に、「必ずしも新築する必要がない」と思われる申請が多数あったと考えられます。新築に対しては、なぜ新たに建物を建築しなければならないかの合理的な説明を十分行うことが必要と考えられます。「そう簡単には新築は認めません!」という強い主張が感じ取れます。

    それ以外にも下記の注釈が追記されていました。

    追加された注釈

    ※1 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)における「建物」、「建物附属設備」に係る経費が対象です。「構築物」に係る経費は対象になりませんのでご注意ください。

    構築物とは、「土地の上に定着した建物以外の土木設備または工作物を表す勘定科目」です。具体的には、看板」や「駐車場の舗装」などが補助金の対象にならないということを注意喚起しているのではないかと思われます。

    これ以外にも、補助対象経費の説明として以下の記載が追記されています。

    補助対象経費の説明に追加された記載

    なお、応募審査では本補助金の趣旨に沿った事業計画を策定しているか確認し、評価の高いものから採択されますが、採択されたことをもって応募時に計上している経費がすべて補助対象として認められる訳ではございません。交付審査時に以下の経費区分に該当しないと判断される経費を計上されている場合は補助対象外となりますので、予めよくご確認の上申請してください。なお、建物費及び機械装置・システム構築費については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)に基づき交付審査を行います。

    申請対象経費については、しっかりと公募要領を確認しておくことがこれまで以上に重要となりそうです。

    その他

    事業計画の評価項目はこれまてとほとんど同じですが、政策点の評価項目に以下が追加されました。

    ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。

    この項目は、再構築後の事業分野の選択が経済産業省の考える政策目標に沿っているかどうかや、より大胆なイノベーションへの取組みを評価するということなのではないかと読み取っています。

    また、第6回の公募要領には「令和4年はさらに2回程度の公募を予定」と記載されていましたので、事業再構築補助金は第8回公募までで終了となる可能性が高そうです。事業再構築補助金の申請を検討している事業者は、早めに応募をした方が良さそうです。

    以上、参考になれば幸いです。
    また、繰り返しになりますが、実際の申請においては必ずご自身で最新の公募要領をご確認ください。

    林

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