【事業再構築補助金】どの申請枠がお得か?投資金額に対する補助金額の比較

事業再構築補助金の申請には、一般的な「通常枠」以外に、申請要件に追加条件のある「特別枠」があります。
第6次公募では、「大規模賃金引上枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」「グリーン成長枠」の4つの特別枠が用意されています。以下、ものすごくザックリとした概要です。

通常枠 一般的な申請枠。補助上限2000~8000万円(従業員数により上限額が変わる)補助率(中小企業)は 2/3(6000万円超は1/2)
大規模賃金引上枠 多くの従業員を雇用(101人以上)し、継続的な賃上げと雇用拡大に取り組む事業者が申請できる枠。補助上限1億円補助率は通常枠と同じ
回復・再生応援枠 業績悪化が激しい事業者または事業再生に取り組む事業者が申請できる枠。補助上限は500~1500万円と低め(従業員数により上限額が変わる)補助率(中小企業)は3/4と通常枠より高い
最低賃金枠 最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上おり、業績悪化が激しい事業者が申請できる枠。補助上限は最大1500万円と低め(従業員数により上限額が変わる)補助率(中小企業)は3/4と通常枠より高い
グリーン成長枠 グリーン成長戦略の重点14分野に取り組む事業者が申請できる枠。補助金上限(中小企業)1億円と高いが、補助率は1/2と通常枠より低い。技術開発計画や人材育成計画などの作成が必要で計画難易度は高め。

特別枠で申請した場合は、申請した枠で不採択となった場合に、通常枠で再審査されるなど優遇されているため、特別枠の申請要件に合致するのであれば特別枠で申請した方が採択率が高くなることを期待できます。

しかしながら、申請枠によって補助金の上限額や補助率が異なります。また、従業員数や企業規模(中小企業または中堅企業)によっても補助上限額・補助率が違うため、どの枠に申請するのがお得か(補助金が多くもらえるのか)は、ちょと分かりにくくなっています。

そこで、今回は、計画している投資額に対して、どの申請枠がより多く補助金をもらえるのかを一目でわかるようにグラフ化してみました。企業規模(中小か中堅か)によって補助金受給可能額が大きく異なるので、そこは分けて説明していきます。

なお、実際の申請にあたっては必ずご自身で最新の公募要領を熟読し、内容を確認してください。(本記事は2022年4月6日時点の情報に基づき記載しています。)

中小企業の場合

中小企業の定義

そもそも、中小企業とは何かという話ですが、事業再構築補助金では、資本金または従業員数(常勤)が下表の数字以下となる会社または個人事業主を「中小企業者」と定義しています。(資本金か従業員数の条件のどちらかを満たせば「中小企業」になります。)

業種 資本金 従業員数
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報サービス業、旅館業を除く)
5000万円 100人
小売業 5000万円 50人
ゴム製品製造業(※) 3億円 900人
ソフトウェア業または情報サービス業 3億円 300人
旅館業 5000万円 200人
その他(上記以外) 3億円 300人

※自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く

ただし、大企業(資本金10億円以上)から多くの出資を受けている法人や、大企業の役員・職員を兼ねている人が役員の半分以上を占めているなどの場合は、「みなし大企業」となり、中小企業者から除外されます。詳しくは公募要領を確認ください。

 申請枠ごとの補助金額

投資金額(補助金対象経費)に対して、補助金額がいくらになるのかをグラフ化しました。「回復・再生応援枠」と「最低賃金枠」は補助上限額・補助率とも同じであるため、まとめています。また、「通常枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」では、従業員の人数によって補助上限額が異なり、グラフも見にくくなるため従業員100人以下の場合と、100人以上の場合で分けました。

横軸が投資金額(補助金対象経費)で、それに対する補助金額が縦軸となっています。(単位: 万円)

従業員数100人以下の場合

中小企業従業員100人以下

補助率の違いから、投資金額が少ない場合(従業員数5人以下の場合は750万円未満、6~20人の場合は1500万円未満、21人以上の場合は2250万円未満)は、「回復・再生応援枠」および「最低賃金枠」の方が「通常枠」より補助金額が大きくなります

また、「グリーン成長枠」は補助率が低いため、従業員51人以上の場合、投資額1億2千万円までは「通常枠」の方が補助金額が大きくなります。(従業員21~50人の場合は8000万円、従業員20人以下の場合は4000万円が分岐点です。)

なお、「大規模賃金引上枠」は従業員数101人以上が対象となるため、上記のグラフには記載していません。

従業員数101人以上の場合

中小企業101人以上

投資額2250万円未満であれば、「回復・再生応援枠」および「最低賃金枠」の方が「通常枠」より補助金額が大きくなります。

「大規模賃金引上枠」は、補助率が「通常枠」と同じでありながら、補助上限額が1億円と高く設定されています。投資金額が1億3千万円以上となるのであれば、「大規模賃金引上枠」を検討するのもアリだと思います。(但し、賃上げや雇用拡大に関する厳しい条件があるため、覚悟が必要です。)

「グリーン成長枠」は補助率が低いため、投資額1億6千万円までは、「通常枠」の方が補助金額が大きくなります。

中堅企業の場合

中堅企業の定義

中小企業は中小企業基本法という法律で定義されていますが、実のところ、中堅企業や大企業は法的な定義はありません。事業再構築補助金では、概ね以下のように定義されています。(※細かい除外条件などもあるので、詳しくは公募要領を確認ください。)

  • 資本金の額又は出資の総額が 10 億円未満の法人であること。
  • 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000 人以下であること。

また、中小企業であっても、中堅企業から多くの資本が入ってる場合や、役員の半数以上を中堅企業の役員・職員が兼務している場合は、「みなし中堅企業」となり、補助金申請の際は、中堅企業として申請する必要があります。

一般的に、中堅企業は中小企業と比べ資金面に優れているため、補助金においては補助率が低く設定されています。ただし、「グリーン成長枠」については補助上限額が1.5億円と中小企業の1億円より高く設定されており、より大規模な取り組みが期待されていることがうかがえます。

申請枠ごとの補助金額

中堅企業であっても「みなし中堅企業」の場合は従業員数が少ないケースもあるため、中小企業の時と同じく従業員100人以下と101人以上に分けてグラフを作成しました。

横軸が投資金額(補助金対象経費)で、それに対する補助金額が縦軸となっています。(単位:万円)

従業員数100人以下の場合

中堅企業100人以下

補助率の違いから、投資金額が少ない場合(従業員数5人以下の場合は1000万円未満、6~20人の場合は2000万円未満、21人以上の場合は3000万円未満)は、「回復・再生応援枠」および「最低賃金枠」の方が「通常枠」より補助金額が大きくなります。

また、「グリーン成長枠」は補助率が低いため、従業員51人以上の場合、投資額1億8千万円までは「通常枠」の方が補助金額が大きくなります。(従業員21~50人の場合は1億2千万円、従業員20人以下の場合は6000万円が分岐点です。) 中堅企業の場合は、補助上限1.5億円と高く設定されています。

なお、「大規模賃金引上枠」は従業員数101人以上が対象となるため、上記のグラフには記載していません。

従業員数101人以上の場合

投資額3000万円未満であれば、「回復・再生応援枠」および「最低賃金枠」の方が「通常枠」より補助金額が大きくなります。

「大規模賃金引上枠」は、補助率が「通常枠」と同じでありながら、補助上限額が1億円と高く設定されています。投資金額が2億円以上となるのであれば、「大規模賃金引上枠」が有利ですが、賃上げや雇用拡大に関する厳しい条件があるため、覚悟が必要です。

「グリーン成長枠」は補助率が低い(1/3)ため、投資額2億4千万円までは「通常枠」の方が補助金額が大きくなります。投資金額3億円未満であれば大規模賃金引上枠の方が補助金額は大きいです。

まとめ

グラフにすることで、それぞれの申請枠での補助金額がどのくらいなのかということをイメージできたのではないかと思います。

「グリーン成長枠」は、補助上限額が高いですが、補助率が低いため投資金額が相当程度大きくない場合は「通常枠」での申請の方が補助金額が大きくなります。しかしながら、「グリーン成長枠」ではコロナ前に比べてコロナ後は業績悪化したという「売上高減少要件」が不要というのが一番大きな特徴だと思います。自然エネルギーの利用やカーボンニュートラル、電気自動車関連産業への進出を検討している事業者にとってはかなり魅力的な支援策であると思います。

それぞれの申請枠の比較をしましたが、特別枠の申請条件を満たすのであれば、通常枠より条件的には優遇されているため優先して検討した方がよいと思います。しかし、「大規模賃金引上枠」では、賃金引上要件・従業員増員要件など厳しい条件があり、達成できない場合は補助金の返還が必要となるため覚悟をもって取り組む必要があります。

以上、参考になれば幸いです。
また、繰り返しになりますが、実際の申請においては必ずご自身で最新の公募要領をご確認ください。

林

事業再構築補助金に関する無料相談をオンライン(Zoom)を受け付けています。
ご希望の方は下のボタンをクリックしてお申込みください。