経営者の方々にとって、価格競争は厳しい問題ではないでしょうか。消費者側から見れば価格競争は歓迎されることかもしれませんが、ビジネスオーナーとしては困難です。本日はこの価格競争からの解放、つまり差別化戦略について説明していきます。動画での解説はコチラをご覧ください。

2023年度の事業再構築補助金では、この差別化戦略が極めて重要なポイントとなっています。その詳細についてはコチラでも解説していますので、そちらも合わせてご覧いただければと思います。

補助金申請に限らず、差別化戦略は経営者にとって非常に重要なテーマなので、全ての中小企業経営者の方々に是非ともご理解いただきたい内容となっています。

本記事では差別化戦略の4つの主要なアプローチについて解説しています。

  1. 参入障壁の構築
  2. 高付加価値・独自性の創出
  3. 模倣困難なビジネスモデルの構築
  4. ニッチ戦略

これらを理解し、自社のビジネスに適応することで、競合との価格競争に巻き込まれることなく、高い利益率を維持し、事業を持続的に成長させることが可能となります!

参入障壁の構築

参入障壁の構築は、競合他社があなたの市場に容易に入るのを防ぐ戦略です。新規参入を制限することで、自社のビジネスにおける競争が激化するのを防ぐことができます。

参入障壁の阻害要素は以下の通りです。

  • 既存企業が持つ優位性(規模、ブランド力、技術力、スイッチングコスト)
  • 法規制

しかし、法規制などは一企業がコントロールできるものではないため、参入障壁を構築するためには、市場で技術やブランドなどの圧倒的な優位性を持つことが必要となります。

参入障壁の構築に関する重要な戦略として、「知財化戦略」、「標準化戦略」、「オープン・クローズ戦略」があります。

知財化戦略

自社の独自の知識や技術を特許、意匠権、商標として保護し、他社がそれを模倣するのを防ぐ戦略です。

例えば、医薬品業界では新薬の開発に多大な投資と時間が必要なため、新薬の製造方法や成分を特許で保護し、特許期間中は他社の参入を防ぐことで競争優位を維持します。

標準化戦略

情報を過剰に保護しすぎると市場の普及・拡大が阻害される可能性があります。こういった状況で考慮するべき戦略が「標準化戦略」です。この戦略は技術、仕様、規格などを公開し、他社の参入を奨励して市場を拡大するものです。Blue-rayディスクがこの戦略を利用した良い例です。

ただし、自社がその中で優位性を確立できなければ、技術・規格の普及と共に一気に競争が増える可能性もあります。したがって、どの情報を秘密にし、どの情報を公開するかを適切にコントロールすることが重要となります。

オープン・クローズ戦略

情報の開示(オープン)と閉鎖(クローズ)を適切にコントロールして、自社の優位性確保と市場拡大を両立させる戦略が、オープン・クローズ戦略です。

具体例としては、Appleが挙げられます。Appleのスマートフォン、iPhoneを動かしているOS(iOS)は、他の企業が触れない範囲になっています。開発者がiOSで何かを作るためには、Appleのルールに従う必要があります。これがクローズ、つまり閉じた部分です。

それと同時に、Appleはオープンの部分、つまりApp Storeを提供しています。App Storeは、開発者が自身のアプリを世界中に提供できる市場のような場所です。ここでは、誰でも自身のアイデアを具現化し、世界に広めることが可能です。

これらの戦略を活用することで、自社の市場への新規参入を難しくする参入障壁の構築と、市場拡大を両立していくことが可能となります。

高い付加価値・独自性の創出

さて、次に「高い付加価値・独自性の創出」は、自社の製品やサービスに他と一線を画す特徴や機能を付与し、顧客への価値を引き上げる戦略です。

例えば、高級ブランドのルイ・ヴィトンのハンドバッグを思い浮かべてみてください。一見すると、これは単なるバッグですが、その象徴的なデザインや細部までこだわった作り、そしてブランドの長い歴史と伝統は他のブランドでは真似ができない独自性と付加価値をもたらします。これにより、一般的なバッグとは別のモノ(価値)として顧客に認知され、価格面で比較されることはなくなります。

また、物を提供するだけでなく、体験を提供することでも独自性と付加価値を生むことができます。例えば、あなたが運営するカフェがあるとしましょう。そのカフェでは、ただコーヒーを提供するだけでなく、店内に美術作品を展示したり、ライブ音楽を演奏したりすることで、一杯のコーヒー以上の特別な体験を提供します。こうした独自性により、あなたのカフェは他のカフェとは一線を画す存在になり、顧客からの評価も高まるでしょう。

模倣困難なビジネスモデルの構築

模倣困難なビジネスモデルの構築は、他社が手に入れにくい経営資源を活用し、他社が簡単にコピーできないようなビジネスモデルを作り上げる戦略です。

この鍵となる経営資源は、以下の3つの特性を備えている必要があります。

  1. ビジネス上の価値がある。(顧客が欲しいものである。)
  2. 希少性がある。
  3. 獲得に時間やコストがかかる。(競合企業にとって模倣が困難である。)

例えば、あなたが地元の特産品を使った製品を製造・販売しているとします。地元でしか取れない果物を使ったフルーツケーキなどがこれに該当します。地元の特産品を扱うのはあなたの会社だけで、地元のコミュニティとの関係を深めることで生産者から直接特産品を調達します。これにより、あなたのビジネスモデルは他社には容易に模倣することが難しくなります。

ニッチ戦略

ニッチ戦略とは特定の市場セグメントに集中する戦略で、これにより大手企業との直接的な競争を避けることが可能になります。

この市場セグメントに集中するというのは、たとえば自動車業界で「電動スポーツカー」、ファッション業界では「犬用の手作り服」、豆腐メーカーでは「オーガニック豆腐」など、市場全体から見れば一部の消費者だけが求めるニッチな市場を狙うことを指します。

セグメントを絞ることにより、市場規模は小さくなり、大手企業にとっては魅力的な市場ではなくなります。その特定の人々のニーズに特化して高品質な商品を提供することで、大手企業との直接の競争を避け、特定の市場での地位を確立することができます。

まとめ

以上、参入障壁の構築、高い付加価値・独自性の創出、模倣困難なビジネスモデルの構築、ニッチ戦略という4つの戦略について詳しく解説してきました。これらのアプローチは、自社の製品やサービスが市場で独自の地位を確立し、競合他社から差別化するための重要な手段です。自社の目的や状況に合わせて、これらのアプローチを組み合わせたり、特定のアプローチに焦点を絞ったりすることで、中長期にわたる収益確保が可能になります。

最後まで本記事をお読みいただき、ありがとうございました!